初級者
初めに:大学入試に向けて
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リトルウッド ”試験はほんとうの数学ではなく,次の段階に進むために勝たなければならない技巧的なゲームに過ぎない.”
〇大学受験数学を勉強するにあたって
数学を勉強するときに,何をしていいかわからない人がいると思いますが,まず,小中学校レベルの計算力を鍛えてください.計算力は数学の基礎となっていて,初めの高校数学はほとんど計算問題が鍵となるといっても過言ではありません.結局計算が早くできないと,できる問題ができなくなってしまう(センター数学の典型)ことがあります.また計算問題を早く解くことで,脳のトレーニングになり,それで脳が活性化され,瞬間の記憶力が高まったり,公式がすばやく出てきたりします.このように計算力があるといいことばかりなので,面倒くさいと思わずに,『これは将来に向けての鍛錬だ.』と思うとよいでしょう.面倒くさい,やりたくないという考えを持っていると受験勉強を乗り越えていけません.ここは割り切って,勉強するからには極めてやるとか,あいつには負けないとか,将来のためだとかしっかり考えてやってください.それだけでもモチベーションが違ってきますよ.一方で計算力を鍛える前に計算方法がよく分からずに,全く進めなくなる人もいるかと思います.私は次に書いた内容をひたすらやっていく中で身に着けていきました.
計算力を鍛えるためにまず初めにやったことは,公式をそのまま当てはめていくことです.何を言っているかというと,高校数学は文字での証明が多いので,そのまま文字のところに値を代わりに入れるだけで,計算問題になってしまうのです.だからはじめのうちは,計算を公式に当てはめていくことで,しっかりと早く問題が解けるように頑張ります.またここで重要なことはなるべく早く解くように心がけることです.例えば,日ごろから文章を早く読むようしないと,早く読むことに慣れていないので,読むのは遅く,文章の理解も遅いままです.だから手を止めずに計算をやってください.また,なるべくたくさん解くことが重要です(教科書や教科書傍用問題集).スポーツでも何度も同じ繰り返しをしていくことで体で覚えていくように,何度も繰り返し計算することで,直観で計算方法を覚えていきます.これをやっていき,逆に自然と公式が出てくるようになれば完璧です.
次に問題の解き方,解答のプロセスを覚えていくことです.ここは基礎的なところをしっかり覚えるだけで十分応用問題ができるようになります.というのは応用問題も結局基礎部分を組み合わせることが多く,後は少し考えるとできるような問題が多いからです.入試では他分野との複合問題が出てくる場合もありますが,この段階ではあまり考えなくていいです.
次に問題をよく考えることです.ここでは,問題に対してどうしてここでこのような方法を使ったのだろうかと,解答のプロセスに注目してください.先ほど覚えることで応用問題が解けるようになることができると書きましたが,実際は覚えるのではなく,理解するということが重要になります.理解できると少し異なる問題が出てきても,「この問題,あの問題に似てるな.この方法で行けるかも」と感覚的に分かるようになってきます.そのうちに複合問題や難しい問題を解くようになりますが,基礎的な問題で理解した内容を選択肢として頭の中に出していき,選択した方法で問題が解けそうか吟味してください.徐々に問題のレベルを上げていき,有機的に思考回路をつなげていくことで,解ける問題の幅が広がっていきます. なお,公式がどうしてこのようになるのだろう,とか根本的なところは公式に当てはめていく過程で,徐々に鍛えられていくと思うのであまり考えなくていいです.
ここまでは問題に対して,答えや方法を覚えていくインプットの話をメインに説明しました.次からはアウトプットの話になります.
まず問題を解くにあたって,相手は何をこちらに求めているかをよく考えてください.問題の作成者はその問題を作るときに必ずこの公式や考えを使って解いてほしいと思っています.例えばここは,三角関数と二次関数を考えればいいとか,具体的に考えてください.その意図が分かると,進む方向性が明確になるので,問題の解くスピードが変わってきます.また,方向性が決まったらはじめのうちはとにかく手を動かしていってください.頭をフル回転していくうちに右脳が先行して今までのやってきたことがぱっと浮かんできて解答が作りやすくなります.なお問題の解き方を間違えた場合,何で間違えたかをしっかり確認することが重要です.計算で間違えたのか,時間が足りなかったのか,方法の選択で間違えたのか,方法の選択肢にそもそもなかったのか等,しっかり分析して対策をとることでできる問題の数も増えてきます.
また問題を解くよりも良いことがあります.一つ目は他人に問題の解答を教えることです.自分で考えた問題の解き方を書いたり声に出したりしていくことで,意識の中に公式やプロセスが顕在化されていき,理解が深まります.二つ目は自分で問題を作って自分で解いてみることです.解ける問題を作るには,初めに核となる問題の分野,問題の解き方を決めてから,数字の調整などの詳細を決めていくことになります.これは問題を解く内容と逆のプロセスになり,複合問題を作れるレベルになれば,その分野の理解力や応用力もかなり上がっているということが自己分析できます.さすがにここまでやる人はほとんどいないと思いますが.
最後に,面倒くさくても基本からしっかりとプロセスを踏んでいけば,必ず応用できるようになるし,結局はそれが一番の近道になります.逆に,はじめに基礎をおろそかにしてしまうと応用問題に来たときに基礎的な部分を使う場面でまた教科書に戻らないといけないので,手間がかかります.大変だと思いますが,自分を鍛えるチャンスと思ってがんばりましょう.入試問題は手際よく解けるように作られた箱庭の中のゲームです.暇つぶしに謎解き問題やパズルを解くようなイメージで取り組めるように自分の考え方を変えることができれば,多少は気が楽になると思います.経験値を獲得してレベルアップしていきましょう.