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コラム:接線問題


¶接線の問題について

接線の問題でよくある問題として,曲線以外のところのある点\((a,b)\)を通るような接線を求める問題があります.
このような問題をどのように求めるか例を見て考えてください.


☆二次関数の接線の問題
問:\(y=x^{2}+3x-2\)に\((1,−2)\)から接線を引いたとき,接線の式を求めよ.

この問題を見た時まずどうするか考えてください.

1,まず問題を素直に読めば,\((1,−2)\)から接線を引くと書いてあるから\((1,−2)\)を通るような直線をつくり,その直線が接線となるような条件を求めればよい.
2,次に接するということに着目すると座標\((t,t^{2}+3t-2)\)での接線は\(y=(2t+3)(x-t)+t^{2}+3t-2\)となる.そしてこの式が点\((1,−2)\)を通るという条件を求めればよい.

〇1のやり方
点\((1,−2)\)を通るような直線は\(y=m(x−1)−2\)…①とおける.
ここで\(y=x^{2}+3x-2\)と連立すると,\(x^{2}+(3-m)x+m=0\)となる.ここで接する条件は判別式\(D=0\)である.よって,\(D=(3-m)^{2}-4m=0\) \(\Leftrightarrow\) \(m=1,9\)
\(m\)の値を①に代入する.
\(m=1\)のとき,\(y=x−3\)
\(m=9\)のとき,\(y=9x−11\)

〇2のやり方
座標\((t,t^{2}+3t-2)\)での接線は\(y=(2t+3)(x-t)+t^{2}+3t-2\)となる.この式は点\((1,−2)\)を通るので,代入すると,
\(-2=(2t+3)(1-t)+t^{2}+3t-2\) \(\Leftrightarrow\) \(t^{2}-2t-3=0\) \(\Leftrightarrow\) \(t=-1,3\)\(t\)の値を①に代入する.
\(t=−1\)の時,\(y=x−3\)
\(t=3\)の時,\(y=9x−11\)

問:\(y=x^{2}+3x-2\)に\((a,b)\)から接線が1本引ける条件を求めよ.

これも同じく1,2の方法が使える.

〇1のやり方
点\((a,b)\)を通るような直線は\(y=m(x−a)+b\)…①とおける.
ここで\(y=x^{2}+3x-2\)と連立すると,\(x^{2}+(3-m)x+ma-b-2=0\)となる.ここで接する条件は判別式\(D=0\)である.よって,\(D=(3-m)^{2}-4(ma-b-2)=0\)
\(m^{2}-2(3+2a)m+4b+17=0\)…① ここで,直線が1本引ける条件は①の条件で\(m\)の解が1つであればよい.つまり,判別式\(D=0\)であればよい.
よって,\(D/4=(3+2a)^{2}-(4b+17)=0\) \(\Leftrightarrow\) \(a^{2}+3a-b-2=0\)

〇2のやり方
座標\((t,t^{2}+3t-2)\)での接線は\(y=(2t+3)(x-t)+t^{2}+3t-2\)となる.この式は点\((a,b)\)を通るので,代入すると,
\(b=(2t+3)(a-t)+t^{2}+3t-2\) \(\Leftrightarrow\) \(t^{2}-2ta+b-3a+2=0\)…①
ここで,接線が1本となる条件は接点も1つなので,①の条件で\(t\)の解が1つであればよい.
つまり判別式\(D=0\)となればよい.よって,\(D/4=a^{2}-(b-3a+2)=0\) \(\Leftrightarrow\) \(a^{2}+3a-b-2=0\)

次に3次関数の時を考えてみましょう.

☆三次関数の接線問題
問:\(y=x^{3}-3x\)に\((a,b)\)から接線が3本引ける条件を求めよ.

これは1のやり方で解けますが面倒! ためしにやってみよう.


〇1のやり方
点\((a,b)\)を通るような直線は\(y=m(x−a)+b\)…①とおける.
ここで\(y=x^{3}-3x\)と連立すると,\(x^{3}-(3+m)x+ma-b=0\)となる.ここで接する条件は…と聞かれたらどう答えますか?判別式もありませんし,答えるのは難しいです.
なのでここでは解について考えます.接するときには二重解と1つの解を持ちます.(グラフを想像してみてください.)

・二重解と1つの解を持つとき
解を\(x=t,u\)とおくと,\(x^{3}-(3+m)x+ma-b=(x-t)^{2}(x-u)\)とおくことができる.係数を比較すると,\(u=-2t\),\(3+m=-t^{2}-2tu\),\(ma-b=-ut^{2}\)
\(u\)を消去すると,\(3+m=3t^{2}\),\(ma-b=2t^{3}\)さらに\(m\)を消去すると,\(2t^{3}-3at^{2}+3a+b=0\) (これ以下は2のやり方でもやる)

このように何回か手はずをとらなくてはいけなくて面倒くさいのです.2のやり方だとすぐに条件の式が出てきます.

〇2のやり方
座標\((t,t^{3}-3t)\)での接線は\(y=(3t^{2}-3)(x-t)+t^{3}-3t\)となる.この式は点\((a,b)\)を通るので,代入すると,\(2t^{3}-3at^{2}+3a+b=0\)
ここで,\(f(t)=2t^{3}-3at^{2}+3a+b\)とおく.この式のグラフを書いて\(t\)が3つの解を持つときの条件を求めればよい.
\(f'(t)=6t^{2}-6at=6t(t-a)\)
よって極値は\(f(0),f(a)\)である.
ここで\(t\)が3つの解を持つ条件は\(f(0)f(a)<0\)である.(グラフを見ればわかると思う.)
よって\((3a+b)(-a^{3}+3a+b)<0\)が答えとなる.

これら例のように二次関数で使えた方法が必ずしも三次関数で使えるとは限らないのです.

次に3次以上の関数について考えてみましょう.

これは答えが非常にややこしくなるので,問題として出されることはないと思います.その理由を言いましょう.

問:関数\(y=x^{4}-2x^{2}-3x+4\)において,\(\left(\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2},-\frac{3\sqrt{3}}{2}+3\right)\)から引いた接線の数と接点の数どうなるでしょう?

それでは2のやり方でやると,座標\((t,t^{4}-2t^{2}-3t+4)\)での接線は\(y=(4t^{3}-4t-3)(x-t)+t^{4}-2t^{2}-3t+4\)となる.この式は点\(\left(\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2},-\frac{3\sqrt{3}}{2}+3\right)\)を通るので,代入すると,\(-\displaystyle \frac{3\sqrt{3}}{2}+3\)\(=\displaystyle(4t^{3}-4t-3)\left(\frac{\sqrt{3}}{2}-t\right)+t^{4}-2t^{2}-3t+4\) \(\Leftrightarrow\) \(3t^{4}-2\sqrt{3}t^{3}-2t^{2}+2\sqrt{3}t-1=0\)
\((t-1)(t+1)(\sqrt{3}t-1)^{2}=0\)
よって\(t=\displaystyle \pm 1,\frac{1}{\sqrt{3}}\)
\(t=1\)のとき,接線は\(y=−3x+3\)
\(t=−1\)のとき,接線は\(y=−3x+3\)
\(t=\displaystyle \frac{1}{\sqrt{3}}\)のとき,接線は\(y=\displaystyle -\left(\frac{8\sqrt{3}}{9}+3\right)x+\frac{23}{9}\)

この結果から接線は2本で接点は3つとなる.こうすると,

問:\(y=x^{4}-2x^{2}-3x+4\)に\((a,b)\)から接線が2本引ける条件を求めよ.
のような問題が入試レベルで解けなくなることがある.なぜなら接点に関して問題を解いていき,接点の数=接線の数として問題を解いていたからである.
つまり,4次以上だと接点の数=接線の数が必ずしも成り立たないため解けない事態がおこるのである.

ちなみに参考としてこういう問題がある.


問 (2001 大阪大)
\(f(x)=x^{4}+x^{3}-3x^{2}\)とおく.曲線\(y=f(x)\)に点\((0,a)\)から接線がただ一つ引けるとし,しかもその接線はただ1点でこの曲線に接するとする.このとき\(a\)の値を求めよ.

解答
\(f'(x)=4x^{3}+3x^{2}-6x\)であるので,接点を\(t\)とすると,接線の式は\(y=f'(t)(x-t)+f(t)\)となる.またこれが,点\((0,a)\)を通るので,代入して計算すると,\(a=-3t^{4}-2t^{3}+3t^{2}\)
ここで,\(g(t)=-3t^{4}-2t^{3}+3t^{2}\)とおき,グラフを考える.増減表は次のようになる.
\begin{array}{c|c|c|c|c|c}
 x & \cdots & -1 & \cdots & 0 & \cdots & \frac{1}{2}& \cdots \\ \hline
 y'& +      & 0  & -      & 0 & +      & 0       \\ \hline
 y &\nearrow& 2  &\searrow& 0 &\nearrow& \frac{5}{16}&\searrow \\ \hline
\end{array}

ここで,接線がただ一つ引けるかつ1点で交わる.⇔\(y=a,y=g(t)\)の共有点が1点のみ
ということになる.よって答えは\(a=2\)である.