上級者
数学Ⅱ:式の証明
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ヒント:始めに\(a+b\),\(a^3+b^3\)の値を求める.また,対称式に関しては,\(a+b=s\),\(ab=t\)とおいて式変形すると都合がよい.
問題(オリジナル)
\(a,b\)を実数とする.\(n\)を自然数とする場合に,\(a^2+b^2=3\),\(a^4+b^4=7\),\(a^{n}+b^{n}\)\(<a^{n+1}+b^{n+1}\)が成立する時,\(a^{n}+b^{n}\)\(+a^{n+1}+b^{n+1}\)\(=a^{n+2}+b^{n+2}\)が成立することを示せ.
解答
\(a+b=s\),\(ab=t\)とおく.
\(a,b\)は実数であるため,\(a,b\)を解にもつ二次方程式\(x^2-sx+t=0\)の判別式\(D\geqq 0\)が条件となる.よって,\(s^2\geqq 4t\cdots(1)\)
また,\(a^2+b^2\)\(=(a+b)^2-2ab\)\(=s^2-2t=3\cdots(2)\)
\(a^4+b^4\)\(=(a^2+b^2)^2-2(ab)^2\)\(=9-2t^2=7\)\(\Leftrightarrow\)\(t=\pm1\cdots(3)\)
\((2),(3)\)より,
\(t=1\)の時,\(s=\pm\sqrt{5}\)
\(t=-1\)の時,\(s=\pm1\)
これらの答えは(1)を満たしているので,いずれも解になりうる.
次に,\(a^2+b^2\)\(<a^3+b^3\)\(<a^4+b^4\)を満たす,\(s,t\)を求める.
\(a^3+b^3\)\(=(a+b)(a^2+b^2-ab)\)\(=s(3-t)\)であることから,\(3<s(3-t)<7\)を満たす\(s,t\)の組は,\((s,t)\)\(=(a+b,ab)\)\(=(1,-1)\)のみである.
次に\(a^{n+2}+b^{n+2}\)\(=(a+b)(a^{n+1}+b^{n+1})\)\(-ab(a^{n}+b^{n})\)
\((a+b,ab)\)\(=(1,-1)\)を代入すると,
\(a^{n+2}+b^{n+2}\)\(=a^{n}+b^{n}\)\(+a^{n+1}+b^{n+1}\)が成立することが分かる.
参考入試問題(1997 東京大学)
\(a,b\)は実数でとする.\(a^2+b^2=16\),\(a^3+b^3=44\)をみたしている.このとき,
(1)\(a+b\)の値を求めよ.
(2)\(n\)を2以上の整数とするとき,\(a^{n}+b^{n}\)は4で割り切れる整数であることを示せ.
解答
(1)
\(a+b=s\),\(ab=t\)とおく.
\(a,b\)は実数であるため,\(a,b\)を解にもつ二次方程式\(x^2-sx+t=0\)の判別式\(D\geqq 0\)が条件となる.よって,\(s^2\geqq 4t\cdots①\)
また,\(a^2+b^2\)\(=(a+b)^2-2ab\)\(=s^2-2t=16\cdots②\)
\(a^3+b^3\)\(=(a+b)(a^2+b^2-ab)\)\(=s(16-t)=44\cdots③\)
ここで\(①,②\)より,\(t\)を消去すると,
\(-4\sqrt{2}\leqq s \leqq 4\sqrt{2}\cdots④\)となる.
また,\(②,③\)より,\(t\)を消去して整理すると,
\((s-2)(s^2+2s-44)=0\)
\(s=2\)の時は,④を満たす.
\(s^2+2s-44=0\)の時について,\(f(s)=s^2+2s-44\)と置く.
\(f(4\sqrt{2})=8\sqrt{2}-12<0\)
\(f(4\sqrt{2})=-8\sqrt{2}-12<0\)
となり,\(f(s)\)は④の条件では常に負であるため,\(f(s)=0\)を満たす実数\(s\)は存在しない.
よって,答えは\(s=a+b=2\)
(2)
(1)の答えを②に代入すると,\(t=ab=-6\)となる.
ここで,\(a^{n}+b^{n}\)(\(n\geqq 2\))が4の倍数であることを数学的帰納法で示す.
(i) \(n=2\)の時,\(a^2+b^2=16\),\(n=3\)の時,\(a^3+b^3=44\)で,両方ともに4の倍数である.
(ii) 次に\(n=k,k+1\)の時に,\(a^{k}+b^{k}\),\(a^{k+1}+b^{k+1}\)が4の倍数であると仮定すると,
\(a^{k+2}+b^{k+2}\)\(=(a+b)(a^{k+1}+b^{k+1})\)\(-ab(a^{k}+b^{k})\)\(=2(a^{k+1}+b^{k+1})\)\(+6(a^{k}+b^{k})\)
\(a^{k}+b^{k}\),\(a^{k+1}+b^{k+1}\)が4の倍数であるため,\(a^{k+2}+b^{k+2}\)が4の倍数となり,\(n=k+2\)の時にも成り立つ.
以上,(i),(ii)から数学的帰納法より,\(n\)を2以上の整数で,\(a^{n}+b^{n}\)は4で割り切れる整数となる.