MATH

上級者

数学A:確率

ヒント:確率という名の不等式問題になります.

問題(オリジナル)
あるコンピュータプログラムを使い,仮想的に\(A,B\)2人でじゃんけんを行う.なお,コンピュータの設定でじゃんけんのグー・チョキ・パーの出す確率を変えられるとする.

①じゃんけんの設定で\(A,B\)のグー・チョキ・パーの出す確率を同じとする場合,2回じゃんけんした時の\(A\)が勝ち越す確率\(P_{A}\)の範囲を求めよ.
②\(n\)回じゃんけんした時に全て勝ち続けるか,あいこになり続けるか,負け続ける場合の確率\(X\)の範囲を求めよ.

解答
①グーを出す確率を\(a\),チョキを出す確率を\(b\),パーを出す確率を\(c\)とする.
\(A\)が1回のじゃんけんで勝つ確率\(P\)は,\(P=ab+bc+ca\cdots(1)\)
\(A\)が1回のじゃんけんであいこになる確率\(Q\)は,\(Q=a^2+b^2+c^2\cdots(2)\)
\(A\)が1回のじゃんけんで負ける確率\(R\)は,\(R=ac+ba+cb\cdots(3)\)
なお,\(a+b+c=1\cdots(4)\),\(P+Q+R=1\cdots(5)\)である.\(P=R\cdots(6)\)

また,\(A\)の勝敗表は次の通りとなる.
\[
\begin{array}{cc}
\hline
パターン&通り&確率 \\ \hline
〇  〇 & 1 & P^2 \\
〇  △ & 2 & PQ \\
〇  × & 2 & PR \\
△  △ & 1 & Q^2 \\
△  × & 2 & QR \\
×  × & 1 & R^2 \\ \hline
\end{array}
\]

よって,\(A\)が勝ち越す確率を\(P_{A}=P^2+2PQ=P(P+2Q)\cdots(7)\)
\((5),(6),(7)\)より,\(P\)のみの関数とすると,
\(P_{A}=-3P^2+2P\)

ここで,\(P\)の範囲を調べる.
\((1),(4)\)より,\(a\)を消去して整理すると,
\(P=bc+(b+c)(1-b-c)\)\(=\displaystyle -(b-\frac{1-c}{2})^2-\frac{3}{4}(c-\frac{1}{3})^2+\frac{1}{3}\)
\(P\)の範囲は,\(\displaystyle 0\leqq P \leqq \frac{1}{3}\)
また,\(P_{A}=-3P^2+2P\)\(=\displaystyle -3(P-\frac{1}{3})^2+\frac{1}{3}\)
よって,\(\displaystyle 0\leqq P_{A} \leqq \frac{1}{3}\)となる.

なお,\(P_{A}=0\)の時,\(P=0\)となり,\((a,b,c)\)\(=(1,0,0)\),\((0,1,0)\),\((0,0,1)\)となる.
\(\displaystyle P_{A}=\frac{1}{3}\)の時,\(\displaystyle P=\frac{1}{3}\)となり,\((a,b,c)\)\(=\displaystyle a=(\frac{1}{3},\frac{1}{3},\frac{1}{3})\)となる.



\(A\)が1回のじゃんけんで勝つ確率を\(P\),あいこになる確率を\(Q\),負ける確率を\(R\)とすると,\(P+Q+R=1\cdots(5)\)
\(n\)回勝ち続ける確率\(X_{1}\)は,\(X_{1}=P^n\)
\(n\)回あいこになり続ける確率\(X_{2}\)は,\(X_{2}=Q^n\)
\(n\)回負け続ける確率\(X_{3}\)は,\(X_{3}=R^n\)
よって,\(X=X_{1}+X_{2}+X_{3}\)\(=P^n+Q^n+R^n\)

まずは最小値を求める.
ここで,\(f(x)=x^n\)は\(x\geqq 0\)において,凸関数となる.
よってイェンゼンの不等式において,\(\displaystyle \frac{f(P)+f(Q)+f(R)}{3} \geqq f\left(\frac{P+Q+R}{3}\right)\)が成立する.
よって,\(\displaystyle \frac{P^n+Q^n+R^n}{3}\)\(\displaystyle \geqq \left(\frac{P+Q+R}{3}\right)^n\)\(=\displaystyle \frac{1}{3^n}\)が成立する.
よって,\(X\)\(\geqq \displaystyle \frac{1}{3^{n-1}}\)
等号成立は\(\displaystyle P=Q=R=\frac{1}{3}\)
※イェンゼンの不等式はこちら

一方最大値は,\(P=1,Q=R=0\) or \(Q=1,P=R=0\) or \(R=1,P=Q=0\)の時で,\(X=1\)

よって,\(\displaystyle \frac{1}{3^{n-1}}\)\(\leqq X\)\(\leqq 1\)