MATH

上級者

数学A:整数

ヒント:今回は余りに関して整理しよう.また参考問題は因数に関して考えよう.

問題
\(a,b,c\)は,\(a^{2}+b^{2}=c^{2}\)をみたす自然数とする(ピタゴラス数).
(1)\(a,b\)ののうち少なくとも片方は3の倍数となることを示せ.
(2)\(a,b\)のうち少なくとも片方は4の倍数となることを示せ.
(3)\(abc\)は60で割り切れることを示せ.


解答
背理法で示す.
(1)
\(a,b\)が3の倍数がないとすると,\((3k\pm 1)^{2}=3(3k^{2}\pm 2k)+1\)である.
すると,左辺を3で割ると余りは2となる.右辺は3で割ると余りは0,1となる.これは矛盾するので,\(a,b\)ののうち少なくとも片方は3の倍数となる.

(2)
\(a,b\)が4の倍数がないとすると,\((4k+1)^{2}\)\(=8(2k^{2}+k)+1\),\((4k+2)^{2}\)\(=8(2k^{2}+2k)+4\),\((4k+3)^{2}\)\(=8(2k^{2}+3k+1)+1\)
よって左辺を8で割ると余りは2,5となる.右辺は8で割ると余りは0,1,4である.これは矛盾するので,\(a,b\)のうち少なくとも片方は4の倍数となる.

(3)
(1)(2)で\(a,b\)のどちらかが3の倍数,4の倍数となるので,\(a,b,c\)のうち少なくとも1つが5の倍数となることを示せばよい.
ここで,\(a,b,c\)が5の倍数がないとすると,\((5k\pm 1)^{2}\)\(=5(5k^{2}\pm 2k)+1\),\((5k\pm 2)^{2}\)\(=5(5k^{2}\pm 4k)+4\)である.
よって左辺を5で割ると余りは0,2,3となる.右辺は5で割ると余りは1,4である.これは矛盾するので,\(a,b,c\)のうち少なくとも1つの5の倍数となる.
また倍数について,3,4,5はいずれの2つも互いに素なので,\(abc\)は60で割り切れる.



参考入試問題
自然数\(a,b,c\)について等式\(a^{2}+b^{2}=c^{2}\)が成り立ち,かつ\(a,b\)は互いに素とする.このとき,次のことを証明せよ.

(1) \(a\)が奇数ならば,\(b\)は偶数であり,したがって,\(c\)は奇数とする.
(2) \(a\)が奇数のとき,\(a+c=2d^{2}\)となる自然数\(d\)が存在する.(1999京大)

解答
(1) \(a\)を奇数として\(a=2k+1\)とおく.\(b=2l+1\)の時,左辺\(=4(k^{2}+k+l^{2}+l)+2\)となる.ここで,\(c\)を偶数としても奇数としても4の倍数+2とならないので成り立たない.(具体的に文字でおいてみるとわかる.)よって\(b=2l\)とおくと,左辺\(=4(k^{2}+k+l^{2})+1\)となる.ここで,\(c\)が偶数のときは明らかに成り立たない.\(c\)が奇数のとき4の倍数+1となり成り立つ.

☆合同式について
合同式とは余りについて考えるときに使う式である.例えば,5を3で割ったとき2となりますが,これを合同式であらわすと\(5≡2~(\bmod 3)\)と書きます.これを使うと上の問題は簡単に解けます.

別解
\(a≡1~(\bmod4)\)で\(b\)が奇数の時,\(b≡1~(\bmod4)\)となる.ここで,\(c≡0~or~1~(\bmod4)\)となる.よって\(a+b≡c~(\bmod4)\)にはならない.次に\(b\)が偶数のとき,\(b≡0~(\bmod4)\)となる.ここで,\(a+b≡1~(\bmod4)\)となる.よって\(c≡1\)となるので,\(c\)は奇数となる.


(2)
\(b^{2}=c^{2}-a^{2}\)\(=(c+a)(c-a)\)
ここで,(1)の条件から\(b\)が偶数,\(a,c\)は奇数なので,\(c+a=2m\),\(c-a=2n\)と置ける.
ここで,\(m,n\)が共通の因数\(p\)を持つとすると,\(c+a=2m'p\),\(c-a=2n'p\) \(\Leftrightarrow\) \(a=p(m'-n')\),\(c=p(m'+n')\)
ここで,\(a,c\)が互いに素であるため,共通因数を持つした仮定は矛盾する.よって,\(m,n\)は互いに素である.
\(b=2l=2a_{1}a_{2}\cdots a_{n}\)と置くと,\(l^2=mn\)で,\(m,n\)は互いに素なので,共通因数である\(a_{k}\)は,\(m\),\(n\)のどちらかに分配される.
よって,\(m=d^2\)(\(d\)は自然数)と置ける.
ゆえに,\(a+c=2d^2\)が成り立つ.

※これはピタゴラス数を作る公式を求める過程と同じです.
\(c-a=2e^2\)と置けるので,\(a=d^2-e^2\),\(b=2de\),\(c=d^2+e^2\)となる.