小休止
ジャンル:オリジナル問題
以前,小休止で載せた未解決問題を遂に解くことができました.
結局高校レベルで解くことができず,論文を引用することになりますが,記載させていただきます.
ちなみに整数問題は少々問題が変わるだけで簡単に解けたり,未解決問題になったりすることがあります.このページの最後に例を載せておきます.
〇問題
\(n!+n=n^m\)を満たす自然数解\(m,n\)をすべて求めよ.(オリジナル)
〇背景・解説
この問題はブロカールの問題に関連した内容になります.
ブロカールの問題とは,\(n!+1=m^2\)を満たす整数の組\((n,m)\)がいくつ存在するかという問題になり,全ての解が出ていない未解決問題です(参考[1]).このブロカールの問題に対して,より一般化したディオファントス方程式\(x^k-y^k=n!\)において,\(x=n\),\(y=1\),\(n=n-1\),\(k=m-1\)としたものが小休止で取り上げた問題となる.よって,\(x^k-y^k=n!\)における整数解\(x,y,k,n\)が存在しうる範囲を求めて,解を導けばよい.
〇解答
\(x,y,k,n\)を整数とする.ディオファントス方程式\(x^k-y^k=n!\)において,P. ErdősとR.Obláthが,\(x,y\)が互いに素,\(k>1\)の場合において,\(k=2,4\)を除いて,解を持たないことを示した[2].
さらに,PollackとShapiroが\(x^4-1=n!\)は解を持たないことを示した[3].
これより\(y=1\)の場合,つまり\(x^k-1=n!\)において,\(k=1,2\)のみ解を持つ.
ここで,\(n\neq0\)の場合,\(x=n\),\(n=n-1\),\(k=m-1\)とすると,\(n^k-1=(n-1)!\)\(\Leftrightarrow\)\(n!+n=n^m\)となるため,元の問題は\(m=2,3\)(\(k=1,2\))のみ自然数解を持つことになる.
(1)\(k=1\),つまり\(m=2\)の場合の\(n-1=(n-1)!\)の成立解を確認する.
\(n=1\)の場合,左辺=0,右辺=1で成立解なし.
\(n=2\)の場合,左辺=1,右辺=1で\((m,n)=(2,2)\)が成立する.
\(n=3\)の場合,左辺=2,右辺=2で\((m,n)=(2,3)\)が成立する.
\(n\geqq 4\)の場合,左辺<右辺なので成立解なし.
(2)\(k=2\),つまり\(m=3\)の場合の\(n^2-1=(n-1)!\)の成立解を確認する.
\(n=1\)の場合,左辺=0,右辺=1で成立解なし.
よって,\(n\geqq2\)において,
\(n^2-1=(n-1)!\)\(\Leftrightarrow\)\(n+1=(n-2)!\)
\(n=2\)の場合,左辺=3,右辺=1で成立解なし.
\(n=3\)の場合,左辺=4,右辺=1で成立解なし.
\(n=4\)の場合,左辺=5,右辺=2で成立解なし.
\(n=5\)の場合,左辺=6,右辺=6で\((m,n)=(3,5)\)が成立する.
\(n\geqq 6\)の場合,左辺<右辺なので成立解なし.
以上(1)(2)より,求める答えは\((m,n)=(2,2),(2,3),(3,5)\)
〇文献
[1]ブロカールの問題,https://ja.wikipedia.org/wiki/ブロカールの問題,20201107
[2]Erdős Paul; Obláth Richard (1937), “Über diophantische Gleichungen der Form \(\displaystyle n!=x^{p}\pm y^{p}\)\(\displaystyle n!=x^{p}\pm y^{p}\) und \(\displaystyle n!\pm m!=x^{p}\)\(\displaystyle n!\pm m!=x^{p}\)”, Acta Litt. Sci. Szeged 8: 241-255.
[3]Pollack, Richard M.; Shapiro, Harold N. (1973), “The next to last case of a factorial diophantine equation”, Comm. Pure Appl. Math. 26: 313-325.
〇参考内容
[2]は英語でないのと数学専門家ではないので,解答の初めで述べている内容が正しいのか分かりませんが,以下の論文のP.2の5行目"Considering"から10行目"no solutions."まで読めば,正しいことが分かります.
Some results of Brocard-Ramanujan problem on diophantine equation \(n!+1=m^2\),S. Maiti,arXiv:2004.09256 [math.NT],2020,
〇終わりに…
整数問題は少々問題が変わるだけで簡単に解けたり,未解決問題になったりすることがあります.
例えば,以下の整数問題は高校レベルの知識で解くことができます.
(1)\(p,q\)を素数,\(n\)を整数とする.\(p^2-7^n=9q^3\)を満たす\(p,q,n\)を求めよ.
解答はこちら
(2)\(p,q\)を素数,\(m,n\)を整数とする.\(n\)が3の倍数でない場合,\(p^2-7^m=4q^n\)を満たす\(p,q,m,n\)を全て求めよ.
解答はこちら
一方で,以下の整数問題は高校レベルの知識で解くことができません.
(3)\(n,x\)を自然数解とすると,\(2^n-7=x^2\)を満たす解を求めよ.
これは,ラマヌジャン・スコーレムの定理(もしくはラマヌジャン・ナーゲルの定理)と呼ばれるもので,この問題は大学入試で解けるレベルの問題ではないです.ちなみに解くと,\((n,x)\)\(=(3,1)\),\((4,3)\),\((5,5)\),\((7,11)\),\((15,181)\)となるそうです.
参考:ラマヌジャン・スコーレムの定理,https://ja.wikipedia.org/wiki/ラマヌジャン・スコーレムの定理,20201107